今日はテニス部で鍛えたこの体力で余裕のフィニッシュだと思ってたのに









猫の縁結び










いやなかなか結構キツイもんだねコレ




あ、どうもどうも。立海テニス部(元)マネのです




ただいまマラソン中




いや、別にどっかの老けた(元)部長さん(うちの(元)副部長も負けてないけど)にグラウンド何周とか言われた訳でもなく




単にマラソン大会というめちゃんこ面倒なモノをやってる訳でして




…実にかったるい… 体力は冒頭でも言ったとおりある方だ、が




中間地点を過ぎた今…疲れはかなり溜まっている。実際速度は最初より下がってるし




まぁ(元)男子レギュラー陣と違って幸村に「敗北は許されないぞ」とか言われてないから気はラクなんだけど…ね




うーし!半分過ぎたし、頑張ろう!!














言った矢先にコレだもんな




今私の目の前にあるのは木




堤防の斜面部分に生えてる普通の木




そしてその枝の先に猫が一匹




みゃあみゃあと悲しげに克つ儚なげに鳴いている




…コレは…





「動物好きとしては助けにゃならんでしょう」





幸い前も後ろも人影はない




堤防の上を走るのはかなり短い距離だという事もあって、不慣れな木登り中の恥ずかしい格好も見られずに済みそうだ




さっと行ってパッと助けてすっと戻るか




そう思いながら木に足を掛けて登り始めた




あとちょい…届け…





「う〜…!」



「みゃあん」





あうぅ…そんな切なげな目で見るもんじゃないぜベイベ!今助けてやるからな




まだ小さな猫に手を伸ばして、お腹からすくい上げるように持ち上げる




良かった…




助けられたことに安堵した瞬間






バキッ






お約束…




枝が根元から折れたため猫とともに斜面に落下




何とか猫は怪我しないよう、咄嗟に猫を乗せた右手を横方向に振りぬいた




小さいとはいえ猫なんだから綺麗に着地出来るはず(少なくとも私よりは)




間髪入れずに襲ってきた額と体への衝撃には耐えられず、私は斜面に放り出された





「…みゃ…」





猫が走り去った気配を薄れた意識で確認して、今度こそ気を失った


















「む」





マラソン大会で堤防を走るコースに差し掛かると、妙なものを目にした




真っ白な子猫が一匹道に佇んでいる、首輪をしていないところを見ると野良猫なのだろう




しかも何故かずっとこちらを見ている




………気になる………




だが幸村に激励されているため、仕方なく横を通り過ぎようとした




のだが





「みゃあん」





……立ち塞がった……のか?




…そうされても俺の家では飼うことは出来んのだが…




心は痛んだが、仕方がないので顔を背けて猫をまたぐ




しかし





「みゃっ」



「こら、何をする。引っ張るな…おい、猫!」





またいだ足の靴紐を引っ張って坂に向かって行く猫




右足の靴紐が完璧に解けたのを見届けて諦めのため息をついた。何かあるのだろうか




仕方なく坂を下り始めると




猫以上に妙なものに出くわした



















枝が折れて、気を失って、どれくらい経っただろう




……多分もう女子は全員ゴールしてるよね…男子も走り始めてるよね……




でもこんな坂の下じゃあ…気付いてもらえないだろうな……




日の位置は大して変わってない、そんなに長い間倒れてたわけではないようだ




先生もまだきっと探しに来てないだろうから、堤防コースを通る男子にゴールしたあと先生に伝えてもらおう




でもまず坂を上がれるか…コレが問題だね




何しろ先生を呼んできてもらうって言ったくらいだ




足を怪我して動けない




……右は重症、左は軽症…多分落っこちた時に枝と地面の間に挟まったんだな…右足




腕は転がり落ちたときの擦り傷程度だ、うーん…這いずって行けば上がれないことはないかな




…よし、草引っつかみながらでも上がろうとりあえず。堤防なんだからそこまで急な斜面でもない!!




目の前の草を掴んで坂を上り始めた。ほふく前進の要領で行けば大丈夫だろ




…あいて、手の平切った気がする。…そーいや軍手もしないでこんな乱暴に草掴んでるんだもんな…仕方ないか。冬だし




でも大丈夫……そろそろ上がりきれる




頑張れ私





「………!?」





おおーう……マジかよ





「………真田さんではないですか」



「お前…こんな所で何をしている!」



「何ってほどじゃ…」





少し離れた場所から真田が走ってきた、手を引っ張って道まで上げてもらう





「……怪我をしているな」



「みゃあん」



「あ、この猫…この子助けようとして木から落ちたんだよ。良かったぁ…怪我してないね〜…」



「…またお前はそのような…いいから見せてみろ」



「あ」





意外と血が滲んでいた手の平や、擦れたり腫れたりしている両足を交互に見てため息をついた





「…たわけが、猫がどうこう言う前に自分の体を心配しろ。これでは歩けんだろう、すぐに手当てをすべきだ」



「じゃあ真田が着いたときに先生に言って、私ここで待ってるから、ね」



「いや、俺がおぶって行こう。早いに越したことはない」





しかしそうして話し込んでいる間にもどんどんと後ろにいたであろう走者に抜かれていく




真田体力馬鹿だし、かなり引き離したはずだよね…実際真田の後に来たのはさっきの人が最初だったもん。なのにもうこんなに抜かれてる




もし一位になれなかったら私の所為だ




ダメだ





「やだ…そんなことして順位落としたら幸村に怒られちゃうよ。ねぇ手当てなんてどうでもいいから早く走って、戻ってよ真田」



「幸村も分かってくれる、そんなことで怒りはせん」



「お願い、お願いだから。私のことなんてどうでもいいの……今からでも真田ならできるよ、お願い…」



「…みゃあ」





白い毛をふわりと押し付けながら猫が私の胸元に来て心配そうに鳴く




両手で猫を包んでもう一度真田の方を向いた




私の所為でテニス部の名前に泥が付くのはイヤだよ




真田に迷惑掛けたくないよ





「…俺をお前の元に連れていったのはその猫だ。お前を心配しているのはそやつとて同じ事だぞ、早くおぶされ」



「いい!大丈夫こんなの痛くないから!!早く…早く戻って一位になって、じゃないとテニス部にも幸村にも…真田にも…迷惑かける……!」



「なんだ…?そんなことか」





きょとんと反応すると、靴紐をしっかりと結びなおしてからいきなり私を猫ごと抱き上げた





「用は一位になれば良いのだろう、容易い事だ」



「へ…」





言うやいなや颯爽と走り出す




嘘!?





「ちょっと…冗談だよね…!?いくら体力あっても私抱いてちゃ一位なんて絶対無理だよ!重いよ降ろしてお願い!!」



「おぶって行こうといったのはお前の怪我を悪化させん為だ。走ろうと思えば走れる」



「まだゴールまで距離あるよ?ねぇそんなに気を遣ってくれなくても大丈夫だから、真田は部の事を優先して…」



「……このあと…」



「え、なに…?」



「柳や仁王が来ても、きっとあいつ等は同じ事をする」



「……でも」



「お前を助けるのは、俺でいい」



「………」





ただ前を見て一人で走っている時と変わらないスピードで走り続けながらそう言った




やだな、ホントどうしよう




馬鹿みたいに格好良い





「たとえ幸村のバツを受けたとしても、お前を助けなかった事の方が後悔する」



「…………」



「気を遣ったなどと考えるな、お前は黙って俺に抱かれていろ」



「……はい…わかりました…」



「みゃあん」





言うとおりに黙って真田の胸に体を預けた




あー……もう惚れる





「真田ってホント馬鹿だよねぇ…」



「黙っていろと言った筈だが…」



「あ、ごめん」





「しかしお前を助けた事が馬鹿というのなら…馬鹿も悪くは無いだろう」





「……言うね」





その後もスピードを落とさず、私を抱いたままなのに前の走者をごぼう抜きにする




凄すぎるってば…








何人か抜いてゴール付近になった頃、目に見えて疲労しているのが分かった




やっぱり…私抱いてた所為だ……まだ一位じゃないのに……





「真田、もういいよ。降ろして、ココからなら私自分でゴールまで歩いて行けるよ」



「最後までお前を連れて行かねば意味がない」



「でもさ…ぁっ!?」





ここへ来てまた加速って




いやいやいやマジあり得ないだろ





「…を他の男に抱かせるのだけは我慢ならんからな」





それってば




期待して…いいのかね……




あぁ…顔赤くなってきた




真田のクセにこんなに格好良いとか…油断してたなぁもう




よし、決めた





「真田」



「何だ」





加速した勢いで先頭を抜かし、ゴール目前でトップに躍り出た真田に小さく声をかけた




ホントに一位になっちまいやがったよこの人は




でもだからこそ




そんな無茶苦茶なところもひっくるめて





「好き」





ゴールした瞬間呟くようにそう言った




のだが





「…っ!!!!」





突然真っ赤になった真田が何も無いところで躓いて転倒した




うわ、タイミング誤った!




猫と一緒に放り出され落下の覚悟を決めた私は、意外にもすぐ傍にいた人物に見事キャッチされる





「…幸村…」



「お疲れ、大丈夫だった?」



「いやいや疲れてるのは真田だし、それにどっちかっつーと盛大にコケてた真田の方が心配なんだけど



「アイツは大丈夫だよ、なんたって真田だし☆ ほら、女子の友達も心配してるぞ。早く保健の先生に診てもらったほうがいい」



「…そっか…な。受け止めてくれてありがとう幸村、じゃあちょっと行って手当て受けてくる」



「うん、行ってらっしゃい」





友達に支えられながら先生のところへ向かった私を笑顔で見送った幸村は軽く一人ごちた





「……確かに一位になれとは言ったけど…まさかそっちでまで勝たせるハメになるとはなぁ」



「みゃあ」



「お前あの堅物にあそこまでやらせるなんて中々やるな、どう?俺のペットにならないか?」



「みゃあん…」



「ふふ…嘘だよ、さぁほら…のところに行っといで」



「みゃあん」




「………さてと…これからどうやって真田の事いたぶって苛め尽くしてやろうか……













その後その猫(♂)は「げんじろう」と名付けられ、私の家で飼うことになった




頻繁に家に来る彼氏(というと物凄く照れ臭い)の真田とも一緒にいる事が多い





「……あまりげんじろうばかり構うなよ…」



「分かってますよ、弦一郎♪」



…っ!!……急に呼ぶなというに…」



「みゃあん」





かなりどうでもいい補足だけど、真田のマラソンの記録は歴代トップであったらしい(本当にあり得ない)




女担いでトップ…立海の歴史に残る事間違いナシだな…




そして何故だかその日から真田に生傷がたえなくなった




…理由を考えるのはよそう












******あとがき******

…あ、ええとアレです、気の迷いです(笑顔)

やっぱり思い浮かんだ時にばーっと一気に書いてしまう方がいい気がしました。神様が降りて来たときに書き上げるのです

これは真田って1時間くらい念じたら何か面倒臭くなってきて最終的には真田にならないでもないですよ皆さん!

時間掛かったなぁ…練りながら書く時ってラストでいつも止まる……

こんな遅くなって何ですが、実はマラソンの試走(1月)の時に走りながら思いついたものです

幸村が走ってないとかその他色々な幸村関係の疑問はもう「幸村だから」っていう理由で片付けといて下さい


06/03/24
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