たとえ詐欺師だろうと









オオカミ少年










「柳生…宿題見せて欲しいんじゃが」



「またですか…仁王君」



「おっはよー!おおお丁度良いところにいたね二人とも!」



「おはようさん、



「おはようございますさん。実は仁王君が…」



「いやぁ柳生に宿題見せて欲しいなぁ〜…と…思っ…?どうしたの紳士」



「いえ…何も無いですよ…はぁ……」



「何よもう…仁王、何があったの?」



は俺と同じ人種ってことだ」



「え!私嘘なんか吐かないよ!



「いやそういう意味じゃあ…まぁええが」





同じクラスの柳生&仁王




とりあえず気の許せる友達って感じで




っつか仁王と二人で柳生をからかうのもまた面白!だしね(某死神漫画)




ただ最近気になることがある






『仁王雅治には想い人がいる』






こんな噂が立海でまことしやかに流れている事




想い人とはまた古い!…じゃなくて




あの仁王に恋愛感情があるかどうか




噂の真偽というよりもそっちがまず気になるところなのよね




いやね、だってね




去年のバレンタインデーなんかさ




くじで園芸委員になった私と柳生が裏庭の草をむしってた




呼び出されたんであろう仁王が来て




待ってた女の子と話し始めたのね




私達は死角に居たんだけど




会話はしっかりと聞こえて来るのよコレが






『に…仁王君…コレ…受け取って下さい…!』




(わぁ可愛い子)



さん、他人の色恋沙汰など見るものでは有りませんよ』



『だってココにいたんじゃイヤっちゅー程聞こえるじゃん。それに紳士も意外とバッチリ見てるし



『…そ、そんなことはないですよ!』



『ははは!紳士っていうの実は伊達だったり?…おぉ!仁王が何か言うよ!』



『え!?』



『(ほらみろ)』




『折角じゃが…お前何か勘違いしとらんか?』



『え………?』




『は?勘違いってどういうことよ柳生』



『さぁ…?どういう意味でしょうか』




『俺は知らん人間から食い物貰って、それを喜んで受け取って食う程優しい男じゃなかよ

それにわざわざこんな寒い場所に呼び出されて不機嫌にもなっとるしな……

どうせ同じ物渡すならクラスに来て他のヤツと一緒に渡してくれんかの。その方がラクじゃ』




『うわぁ……仁王…キツ過ぎ…そうやってほかの子と一緒にされたくないから来たんでしょうが…』



『…あれではあの方が報われません』



『あ、泣いて帰っちゃったよ』



『でしょうね…』



『なにもあそこまで言うことないんじゃ…』



『ええ、他にも気を遣った言い方が…』



『『……………』』





言いかけてから柳生と顔を見合わせて首を振った




そう、仁王雅治はそんな男なのだ




例え自分の立場が悪くなろうが、気に入らない相手とは一切喋らない




人を傷つける事をいとわない




社会的地位などなんのその




コート上のペテン師とかいう犯罪的匂いを漂わせるネーミングにもプレイを見ていて納得はいくが




私生活の方がよっぽどデンジャーな気がする




自分至上主義を貫く男仁王雅治




そんな男が恋愛感情ですと?




二年間仁王と友達やってるけど




ちゃんちゃら可笑しい




きっと誰かが流したデマに過ぎないだろう




っつか誰が流したかの方が分からないよ(命知らずもいいトコだよね)













さん…さん…!」



「へ?」



!…何度呼ばせれば気が済むんだ?そんなに先生に名前を呼ばれるのが好きなのか?うん?」



「いや…決してそんな悪趣味な事は…



「悪趣味とは失礼なヤツだな!まぁいい、バツとして次の休み時間俺について来い!用事を頼む」



「げ!マジですか…」





クラスからどっと笑いが起きた(だって悪趣味でしょあの先生に名前呼ばれるのが嬉しいとか)




考え事してた所為で何も聞こえてなかったらしい




くそ…用事って何なんだよ…!柳生ももうちょい大きい声で呼んでくれれば良かったのに!(責任転嫁)





「こら仁王も寝てるんじゃない!二人で職員室だぞ!分かったな!」





うお…まるで漫画の様な展開…














「柳生!もっと早くから呼んでよもう!」



「ちゃんと呼んでましたよ、上の空だったのは誰ですか!」



「違う!お空の鳥さんに呼ばれたような気がして意識がトリップしてたのよ!」



訳の分からない事を言わないで下さい。それより行かなくて良いのですか?」



「そうだ…仁王!起きて起きて!早く行こう、また遅れたらうるさそうだから」



「ん…仕方ないのぅ…」











「先生、用事って何ですか?」



「あぁ、よく来たな。コレを準備室に持って行って欲しい」





見れば一人では到底運べないほどの教材(地図やらなにやら…)




何でこんなに溜め込んでるんだよアンタ





「…全部ですか」



「ははは!まぁ授業中に話を聞いてなかったにしては軽いだろう、頼んだぞ」



「わかりました…頑張ろう仁王」



「ああ」








覚束ない足でふらふらとどデカイ地図を運ぶ私




後ろから私が持ってるものより比較的重たい物を持って歩く仁王




いつもと変わらない足取りを見て、今更ながら力があるんだなぁと感心してしまった




しかしそう思ったのは一瞬で体への鈍い衝撃で我に返る





「あいたっ!」





前がよく見えてなかった私は前方から来た二人の男子にぶつかってしまったらしい(尻餅ついちゃったよ…




今の場合前を見てなかった向こうも悪いんだけどココは素直に謝ろう





「ご…ごめんなさい」



「いってぇなぁ!ちゃんと前見ろよお前!ウザいんだよブスが!」



「(…何でぶつかっただけでここまで言われなきゃなんないんだよ)…すいません」





「…お前ら言い過ぎじゃ。前を見てんかったお前らも悪いに決まっとる。謝ってるヤツに対してあんまりだろ」





「んだよ…っ!?…お前…」



「おい…コイツ仁王じゃねーか?」



「ああ、大堂寺さんを振ったっていう…信じられないよな」



「へぇ、詐欺師さんはこんな女が好みなのかなぁ?分からねぇモンだな」



「いい気なもんだぜ。ちょっとモテてるからってな。大方そいつの事もお得意のペテンで騙くらかしてるんだろ」



「………用が済んだなら余計なコト喋らんとどいてくれんか、早くコレを片付けたいんでな」



「…ちっ、言い返しすらしねぇのかよ…行こうぜ」





仁王がひと睨みするとそう言ってそそくさと去って行った




嫌味なんて通じないって事分かってないんだよね




しかもモテるモテないって仁王の方が遥かに顔良いんだから当然でしょ…あんな奴らと違って




大堂寺さんてあの…今や立海のアイドル的存在、絶対無敵の容姿を誇るあの子(去年のバレンタインに振った子)




あの時はそんな存在になるとは思ってなかったけど(可愛いとは思ったけどさ)





、もうすぐ準備室じゃ。行くぞ」



「あ!ありがとう仁王」





私が落としたデカイ地図を二本ほど担いでくれた




こういう優しいトコもあるんだよね。一応











「これがココっと…う―――…よっ…と」



「貸してみんしゃい、ほれ」



「仁王やっぱ背ぇ高いね…っていうかこれゴチャゴチャに入ってて分けるの時間かかるし…」



「もう次の授業も始まる時間か」



「ま、自習だから多少遅れても大丈夫でしょ」



「そうだな、ゆっくり戻るか…っとチャイムじゃ」



「ここ結構ちゃんと聞こえるんだね。さて…これで終わりっ」



「それじゃ、戻るぞ」



「うん。…………ゲッ





開けようとしても頑として動かない扉に冷や汗が流れる





「どうした」



…お約束。です」



「鍵…か?」



「その通り」



「「……………」」











その辺に腰掛けて溜息をつく私





「誰が締めて行ったんだろう…」



「多分クラスのヤツらはサボりだと思うじゃろうしな」



「次の休み時間まで待つしかないって事…だね」



「次の時間にココの前を通るヤツがおるかどうかは微妙じゃがな」



「確かにあんまり人は通らない場所だけど…流石にそこまでいったら柳生が気にしだすでしょ」



「それもそうか。ま、正当な理由が出来たんじゃ。自習の下らん課題やらんで済むと思えば楽なもんだろ」



「そっか」





窓も無いから外に向かって声をあげる事もできないし、心細くないっていうと嘘だけど




一緒にいるのが仁王だと思うと何となく顔が綻んだ




知らない人だったら気まずくて仕方ないもんねきっと










扉から入ってくる光が室内を明るく照らしている




何分くらい経ったかな。多分10分ちょいだと思うんだけど




ずっと仁王が黙り込んでるから何か悪い事したのかと考え始めた私に、いつもより少し低い声が掛かった





「…は俺が詐欺師でない方が良いと思うか?」



「何よ急に…」



「告白してきた女ってのは皆言うんじゃ『こんなヒドイ事言う人だとは思ってなかった』ってな」



「ふぅん」



「詐欺師っていうのはこの慇懃無礼な性格からも付けられたモンだと思うんじゃが…


それに色んなヤツの反感買っとるからな。さっきみたいにお前まで悪く言われる事もあるじゃろ?


だからよう一緒におるお前にとっても、俺はこんな性格じゃない方がいいんじゃないかと思ってな」



「それはそうだろうね…でも別にいいじゃんそのままで」



「…何でそう思う?」



「だって私はそんな仁王と友達になって今こうやって一緒にいるんだよ?違う性格の仁王なんて考えられないよ


一緒に居て文句つけられるのは仁王じゃなくて相手が悪いの。一緒に居るのを選んでるのは私なんだからね


そんな事アンタは気にしなくて良し!その性格が仁王らしいってことでしょ。だからそのままの仁王で…ね!」















何でコイツは俺の




一番聞きたかった言葉をくれるんじゃろうか




一番言って欲しかった言葉が分かるんじゃろうか




それに気付いたのは最近になってやったんが




泣きたいほど辛い




何故なら





「なぁ、俺お前の事…好きじゃ」



「へっへっへ、私も。他の子と違うみたいで嬉しいんだけど…あんまり軽々言うもんじゃないよ?」





俺は去年からこの言葉を何度もに言っとるから




他の女子より好きやったのは確かやったから




でも




今まで散々色んな女子が軽々俺に言ってきた「好き」




なんて陳腐で下らない言葉じゃと思っとったのに




今になってそれがこんなにも大事な言葉だとは思わんかった






オオカミ少年






それまでにした言動でいざ本当の事を言っても信じてもらえなかった哀れな少年の話




嘘を吐いてはいけないという子供への教訓に使われる愚かな少年の話




それはきっと




俺の事





「ってのは……冗談だけど」



「は?なんじゃイキナリ」



「仁王はね…緊張したりするとね、1秒間くらい瞳を閉じる癖があるのね…さっきみたいにさ」



「さっき…」





あぁ




「好き」って言った




あの時





「…そのデータが間違ってなかったら…良いなぁ…って思った…」





どんどん声が小さくなって俯く




待て、俺が黙ったからって泣くなよ?頭の回転は鈍くないが今はちょっと遅くなっちょる









っつーことは




さっきの言葉が緊張して言った言葉であれば良い




つまり本気だったら良い




そういう事なんか?










「ややややっぱり間違ってたよね?ゴメン…何か訳分かんない事言ってるね…私…!?」





赤くなってさっきの言葉を否定しようとする




何も言わずに抱き締めてやった




誰も気付かんかった俺のそんな癖に気付いとったなんて




嬉し過ぎる




それだけ俺の事見てくれとったんじゃな




だから俺の言って欲しい言葉が分かるんじゃな




お前は





「…やっぱり好きじゃ…



(私も同じ気持ちだって気付いたのついさっきだったけど)



「俺が詐欺師でも…」



「任せといて!信じるよ、その言葉は」







また読まれとったか







腕に収めた




俺が唯一「好き」になった女




離さん




愛しい




これからは俺だけの…な












オオカミ少年




あの話の中でも




物語の中には出てこんかっただけで




信じてくれとった人はきっと




いや、必ず居った















きっとそれ以上の幸せは無い













++++++++あとがけ++++++++

訳分からない訳分からない訳分か(あと五百回言わせて下さい)

誰だコレ、え?仁王?そうだったの?(おい)社会の時に使う地図って異常に重くないですか

何か白すぎて仁王じゃない気がする(失礼)誰か酒持ってこい!過去の過ちを消す!(過去じゃないし飲めません)

結局助かったのか柳生はどうなったのか分からない事だらけでスイマセン。きっとこの後柳生に助けられてます

「大堂寺さん」は一般的な道から堂にしました。それならどなたかの名前と被らないんじゃないかと(笑)

私はタイトルと結びつけて終わらせるのが好きみたいです

仁王大好きだー(でも方言未だに分からないぜー)


05/03/19
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